地縁による社団・財団に新たな道開く
2009年6月22日

公益総研 非営利法人総合研究所
主席研究員兼CEO 福島 達也

 

日本では従来、地縁による自治会などは法人ではなかったため、地縁団体が所有する不動産(自治会館など)は代表者の個人名義や役員の共有名義で登記が行われていた。

しかしこれでは、代表者・役員が変更された時などに不都合があり、1991年4月に地方自治法が改正され、町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(認可地縁団体)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利義務の帰属主体となることができるようになったのだ。
なので、1991年以降に地縁団体が社団法人や財団法人になることはまずなかったのだが、問題はそれ以前に設立した社団法人・財団法人である。


今回の法人制度改革は、そのような地縁による自治会的な社団・財団法人にも当然関係するので、山林など相当の不動産を有する社団・財団法人は、公益か一般かの選択時にかなり大きなハードルがあるのだ。

なぜかというと、公益法人に移行する場合は、公益目的事業がほとんどないということがネックとなっている点だ。

地縁による団体だから会員はほとんど地域の住民であり、その人たちのために活動をしているといっても過言ではない。
助成事業は地域の老人会や婦人会や保育園など、特定の範囲の特定の団体に限られるので、これも公益目的事業になりにくい。
大きな収入源はゴルフ場など企業や行政に土地を貸している賃料だったりすることも多いので、それももちろん公益目的事業にはならない。
山林の管理といっても、その事業費は会員の日当がほとんどだったりする場合もある。
そういう理由で、地縁による団体の公益法人化はほとんど不可能に近いと言われていた。


では、一般法人に移行することは簡単であろうか。

それもなかなか難しい問題がある。

一般法人に移行する場合の一番のハードルは、公益目的財産額が相当大きな数字になってしまうことだ。
ご存知のように、一般法人に移行する場合の公益目的財産というのは、その法人の正味財産額とほぼ等しい。
いや、むしろ、簿価ではなく時価で計算するので、正味財産額よりも大きくなってしまうことがよくある。
というのも、土地などは簿価では格安の金額になっているが、実際の評価額は10倍になることもある。
そうなると、ビル、駐車場、ゴルフ場用地などを持っていると、何億円という財産を所有する法人ということになってしまうのだ。
その割に公益事業での支出があまりないとなると、公益目的事業計画をいくら作成しても、公益目的財産額が毎年消費しても、零になるのは何十年、ヘタをすると何百年という計算になってしまうことがある。

これではせっかく一般法人になって主務官庁の監督から解放されるといっても、それは相当先のことということになってしまう。


だから、当然第3の道も考えたいところであったのだが、そこに朗報が舞い込んできたのだ。

それは、総務省自治行政局が各都道府県に総務部長にあてて先日通知した「地方自治法施行規則に一部を改正する省令等の交付について」である。


これによると、今年の4月1日から、従来の公益法人(特例民法法人)が、まったく同じ団体として新規に設立した地方自治法第260条の2第1項で規定する「認可地縁団体」に移行する場合、不動産の所有権等の移転登記にかかわる登録免許税について、非課税措置を講ずるということなのだ。

さらに、不動産のみならず、財産の移動(寄付扱い)についてもその譲渡所得税等について、租税特別措置法第40条第1項に規定する「譲渡所得等の非課税」を適用するということになる。


今までは、措置法第40条第1項後段に規定する「公益を目的とする事業を営む法人」(以下「公益法人」という。)とは、寄附行為、定款又は規則(これらに準ずるものを含む。以下同じ。)により公益を目的として行うことを明らかにして行う事業や社会一般において、公益事業とされている事業を行う法人のこととされていたが、残念ながら、「地方自治法(昭和22年法律第67号)第260条の2第1項《地縁による団体》に規定する「地縁による団体」その他専らその構成員等の利益を図ることを目的とする法人は、公益法人に該当しない。」と明記されていたのだ。

しかし、こちらも昨年の12月19日の国税庁長官の通達で、除外条項である「地縁団体を除く」という部分がカットされた。

要するに、地縁により結成された従来の社団法人や財団法人は、公益法人に移行するか一般法人に移行するかという選択肢のほかに、「認可地縁団体」に移行するという第3の道が開かれたことを意味するのだ。

なので、公益か一般か悩んでいる法人やどちらも移行するにはハードルがあり簡単に移行できそうもない法人は、ぜひこの機会に検討してみるといいだろう。

ちなみに、認可地縁団体は、下記の内容であれば簡単に設立できるので、検討する価値は十分あるといってもよいだろう。


「認可地縁団体は、正当な理由がない限り、その区域に住所を有する個人の加入を拒んではならない(第260条の2第7項)。すなわち、その地域の住民全てが加入できる団体が認可の対象となる。 したがって、生産組合、婦人会、老人会のような加入条件のある団体は認可されない。 認可申請の時点ですでに不動産を取得しているか取得する予定があり、団体の総会を開催して、認可申請をするという議決を行う必要がある。 認可地縁団体を、公共団体その他の行政組織の一部とすることを意味するものと解釈してはならないとされる(第260条の2第6項)。 また、認可地縁団体を、特定の政党のために利用してはならない(法第260条の2第9項)。」





<参考>

租税特別措置法第40条

(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)

第40条

 国又は地方公共団体に対し財産の贈与又は遺贈があつた場合には、所得税法第59条第1項第1号の規定の適用については、当該財産の贈与又は遺贈がなかつたものとみなす。公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(法人税法別表第2に掲げる一般社団法人及び一般財団法人で、同法第2条第9号の2イに掲げるものをいう。)その他の公益を目的とする事業(以下この項から第3項まで及び第5項において「公益目的事業」という。)を行う法人(外国法人に該当するものを除く。以下この条において「公益法人等」という。)に対する財産(国外にある土地その他の政令で定めるものを除く。以下この条において同じ。)の贈与又は遺贈(当該公益法人等を設立するためにする財産の提供を含む。以下この条において同じ。)で、当該贈与又は遺贈が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与すること、当該贈与又は遺贈に係る財産(当該財産につき第33条第1項に規定する収用等があつたことその他の政令で定める理由により当該財産の譲渡をした場合において、当該譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて取得した当該財産に代わるべき資産として政令で定めるものを取得したときは、当該資産(次項及び第3項において「代替資産」という。))が、当該贈与又は遺贈があつた日から2年を経過する日までの期間(当該期間内に当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供することが困難である場合として政令で定める事情があるときは、政令で定める期間。次項において同じ。)内に、当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供され、又は供される見込みであることその他の政令で定める要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたものについても、また同様とする。

2 国税庁長官は、前項後段の規定の適用を受けて贈与又は遺贈があつた場合において、当該贈与又は遺贈に係る財産又は代替資産(以下この項において「財産等」という。)が当該贈与又は遺贈があつた日から2年を経過する日までの期間内に当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供されなかつたときその他の当該財産等が当該公益法人等の当該公益目的事業の用に直接供される前に政令で定める事実が生じたとき(当該公益法人等が当該財産等(当該財産等の譲渡をした場合には、当該譲渡による収入金額の全部に相当する額の金銭)を国又は地方公共団体に贈与した場合その他政令で定める場合を除く。)は、前項後段の承認を取り消すことができる。この場合には、その承認が取り消された時において、政令で定めるところにより、同項に規定する贈与又は遺贈があつたものとみなす。

3 国税庁長官は、第1項後段の規定の適用を受けて行われた贈与又は遺贈を受けた公益法人等が、当該贈与又は遺贈のあつた後、当該贈与又は遺贈に係る財産又は代替資産(以下この項において「財産等」という。)をその公益目的事業の用に直接供しなくなつた場合その他当該贈与又は遺贈につき政令で定める事実(前項に規定する事実を除く。)が生じた場合(当該公益法人等が当該財産等(当該財産等の譲渡をした場合には、当該譲渡による収入金額の全部に相当する額の金銭)を国又は地方公共団体に贈与した場合その他政令で定める場合を除く。)には、第1項後段の承認を取り消すことができる。この場合には、当該公益法人等を当該贈与又は遺贈を行つた個人とみなして、政令で定めるところにより、これに当該財産に係る山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額に係る所得税を課する。

4 前項後段の規定の適用を受けた公益法人等に対する法人税法の規定の適用については、同法第38条第2項中「次に掲げるもの」とあるのは、「次に掲げるもの及び租税特別措置法第40条第3項後段(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)の規定による所得税(当該所得税に係る同項の財産の価額が当該財産の同条第1項に規定する贈与又は遺贈を受けた同項に規定する公益法人等の各事業年度の所得の金額又は各連結事業年度の連結所得の金額の計算上益金の額に算入された場合における当該所得税を除く。)」とする。

5 第3項の代替資産には、同項の公益法人等が、同項の贈与又は遺贈を受けた財産(当該公益法人等の公益目的事業の用に2年以上直接供しているものに限る。)の譲渡をし、その譲渡による収入金額の全部に相当する金額をもつて資産(当該財産に係る公益目的事業の用に直接供することができる当該財産と同種の資産(財務省令で定めるものを含む。)、土地及び土地の上に存する権利に限る。以下この項において「買換資産」という。)を取得した場合において、その譲渡の日の前日までに、当該譲渡の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときにおける当該買換資産を含むものとする。この場合において、当該公益法人等は、当該買換資産を、当該譲渡の日の翌日から1年を経過する日までの期間(当該期間内に当該公益目的事業の用に直接供することが困難である場合として政令で定める事情があるときは、政令で定める期間)内に、当該公益目的事業の用に直接供しなければならない。

6 第1項後段の規定の適用を受けて行われた贈与又は遺贈(以下この項から第9項までにおいて「特定贈与等」という。)を受けた公益法人等が、合併により当該公益法人等に係る第3項に規定する財産等を合併後存続する法人又は合併により設立する法人(公益法人等に該当するものに限る。以下この項において「公益合併法人」という。)に移転しようとする場合において、当該合併の日の前日までに、政令で定めるところにより、当該合併の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、当該合併の日以後は、当該公益合併法人は当該特定贈与等に係る公益法人等と、当該公益合併法人がその移転を受けた資産は当該特定贈与等に係る財産と、それぞれみなして、この条の規定を適用する。

7 特定贈与等を受けた公益法人等が、解散(合併による解散を除く。)による残余財産の分配又は引渡しにより当該公益法人等に係る第3項に規定する財産等を他の公益法人等(以下この項において「解散引継法人」という。)に移転しようとする場合において、当該解散の日の前日までに、政令で定めるところにより、当該解散の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、当該解散の日以後は、当該解散引継法人は当該特定贈与等に係る公益法人等と、当該解散引継法人がその移転を受けた資産は当該特定贈与等に係る財産と、それぞれみなして、この条の規定を適用する。

8 特定贈与等を受けた公益法人等で公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成18年法律第49号。以下この項及び第11項において「公益認定法」という。)第29条第1項又は第2項の規定による公益認定法第5条に規定する公益認定の取消しの処分(当該取消しの処分に係る事由により第1項後段の承認を取り消すことができる場合の当該処分を除く。以下この項において「特定処分」という。)を受けたもの(当該特定処分後において、第1項に規定する特定一般法人に該当するものに限る。以下この項において「当初法人」という。)が、同条第17号に規定する定款の定めに従い、その有する公益認定法第30条第2項に規定する公益目的取得財産残額に相当する額の財産(以下この項において「引継財産」という。)を他の公益法人等(以下この項において「引継法人」という。)に贈与しようとする場合において、当該贈与の日の前日までに、政令で定めるところにより、当該贈与の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、当該贈与の日以後は、当該引継法人は当該特定贈与等に係る公益法人等と、当該引継法人が当該贈与を受けた公益引継資産(当該引継財産のうち、当該特定処分を受けた公益法人等に係る第3項に規定する財産等に相当するものとして政令で定める部分をいう。)は当該特定贈与等に係る財産と、それぞれみなして、この条の規定を適用する。この場合において、当該贈与の日以後は、当該当初法人については、第3項の規定は、適用しない。

9 特定贈与等を受けた第1項に規定する特定一般法人が、第3項に規定する財産等を他の公益法人等(以下この項において「受贈公益法人等」という。)に贈与しようとする場合(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律及び公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成18年法律第50号)第119条第2項第1号ロに掲げる寄附に該当する場合に限る。)において、当該贈与の日の前日までに、政令で定めるところにより、当該贈与の日その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出したときは、当該贈与の日以後は、当該受贈公益法人等は当該特定贈与等に係る公益法人等と、当該受贈公益法人等が当該贈与を受けた資産は当該特定贈与等に係る財産と、それぞれみなして、この条の規定を適用する。

10 第5項後段の規定は第6項から前項までの規定を適用する場合について、第8項後段の規定は前項の特定一般法人について、それぞれ準用する。

11 第9項に規定する特定一般法人が、公益認定法第4条の認定を受けた場合には、当該認定を受けた日から1月以内に、政令で定めるところにより、当該特定一般法人の名称及び所在地その他の財務省令で定める事項を記載した書類を、納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出しなければならない。

12 国税庁長官は、第1項後段の承認をしたときは、その旨を当該承認を申請した者及び当該申請に係る公益法人等に対し、当該承認をしないことを決定したとき又は当該承認を第2項の規定により取り消したときは、その旨を当該承認を申請した者又は当該承認を受けていた者に対し、当該承認を第3項の規定により取り消したときは、その旨を当該承認に係る公益法人等に対し、それぞれ通知しなければならない。

13 第1項後段の承認につき、その承認をしないことの決定若しくは第2項の取消しがあつた場合(当該取消しがあつた場合には、政令で定める場合に限る。)における当該承認を申請した者若しくは当該承認を受けていた者の納付すべき所得税の額で当該処分に係る財産の贈与若しくは遺贈に係るものとして政令で定めるところにより計算した金額又は第3項の取消しがあつた場合(政令で定める場合に限る。)における当該承認に係る公益法人等の納付すべき所得税の額についての国税通則法第60条第2項の規定の適用については、同項本文に規定する期間は、同項の規定にかかわらず、当該決定又は取消しの通知をした日の翌日から当該金額を完納する日までの期間とする。

14 第1項の規定の適用を受ける財産の贈与又は遺贈について所得税法第78条第1項の規定の適用がある場合における同条の規定の適用については、同条第2項中「寄附金(学校の入学に関してするものを除く。)」とあるのは、「寄附金(租税特別措置法第40条第1項(国等に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税)の規定の適用を受けるもののうち同項に規定する財産の贈与又は遺贈に係る山林所得の金額若しくは譲渡所得の金額で第32条第3項に規定する山林所得の特別控除額若しくは第33条第3項に規定する譲渡所得の特別控除額を控除しないで計算した金額又は雑所得の金額に相当する部分及び学校の入学に関してするものを除く。)」とする。

15 第13項に定めるもののほか、第1項後段の承認の手続、第2項後段の規定によりあつたものとみなされる贈与又は遺贈に係る所得税法第78条の規定の特例、第3項後段の規定により贈与又は遺贈を行つた個人とみなされる公益法人等に対する所得税に関する法令の規定の適用に関する特例その他第1項から第12項までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

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